t-products Architect's Office

2018.06.15

牛伏川階段工とその上

松本に通う様になって改めて観光地図をぼんやり眺めていたら、
右下の方に「牛伏川フランス式階段工」という何かを見つけました。
調べてみると土木遺構らしい。


工務店の社長さんに「この出張の機会に見てみたい」等と雑談していたら、
2,3日後、地方新聞の切り抜きが送られてきました。



次の松本出張の翌日が見学会。素晴らしい。参加です。

徒歩は無理無理!と土木事務所の担当の方がおっしゃったので、当日、レンタカーを借りました。
集合場所が、、、どうも山のふもと。
途中、水の風景がちらちらと見えてきて、、、



気になるので車を停めました。





本当は山並みがみえるのですか、もしかして水面に映りこむのかな、
いやいや、雨天の天気予報が曇天になって、見学会中止にならなかったことを感謝しよう。



結構集まってました。





3チームに分かれて登り始めます。





落ちる水の音、段々の緑、全部石積
来てよかった。

集合時間より早くついて先に見てました。一応一回は独り占めしたいと思って。
観光客いないと思っていたら、偶然にも来た2人はツッカケ履いて登っていきました。



この後、案内人の方について登っていきます。
両岸を歩くと、斜面の勾配が体感できます。階段工の石積は覗きこまないと見えない高低差がついてます。





段のコーナーは曲面状に仕上げられています。
落ちる水の力で下段を削らない様に、激流にならないような水の落とし口を考慮されているとのこと。
各段の平な所にも水抵抗をつけ水流速度を落とすためのハンプ(凸凹)がついてます。



石積は空積、だそうです。コンクリートなどでつなぎとめず、石同士の摩擦で石積み形状を維持しています。
コンクリートで固めてしまわず、空積の隙間から地下にも水が浸透するようにしているとの事。





先頭で一生懸命なにやらメモしている小学生が、見せてくれた、図解。
次世代、凄いです。(ピンボケ失礼しました)

そもそも、なぜ、階段工なのか。
素人の私は山留(土が崩れない様に)なのかな、と思って聞いてみると、
1)沢の流速によって土砂が削られ下流の村や地域を埋めるほどの土砂災害があった、
2)高低差、勾配を緩くすれば水の流速が遅くなり周辺の地盤を削る力が弱まる
3)落流の先を土ではなくて石積にすることで掘られない
4)階段状という事は、斜面より流れる距離が増し、つまり抵抗も増え、水流速度も落ちる
だから、階段状。という事らしいです。
急斜面で発生する急な水流が、山を削って土砂を出さないため、という事かな。



石積み側面をみる。
Q.「この石はどこから用意したのでしょうか?」
案内人さん「実は山の上の方に石が取れるところがあり、適正なサイズに石切り場で加工して、
小さなケーブルカーみたいなもので吊り下げて運搬してたようです。材料手配をかなり効率的に行っていました。」
一同「おおおー!」



階段工の上からの眺め。
階段工はここまでですが、その上に未だいくつも石堰提はありました。
作られた時期によって形式も石の形も違いました。
そして沢も続いています。





沢が2方向から合流している場所に松建小屋があります。



右と左では明らかに水の色が違います。
左は泥川と呼ばれている様です。
ここから泥川方向へ



本流と合流するように細い石積が見えてきました。





写真を大きくしてみてみると、斜面の大部分に木がなく土が現しになっていることが分かります。
枝分かれした白い線は、先ほどの石積み部分で水を誘導する仕組み、
斜面側は一定の高さ毎に段を作り、土部分は植林したという説明があります。
植林は広葉樹系、現在の景色を見ると想像できないけど、確実に計画を考えた人の意図を超えて木が育っています。



そういう場所が、この上流に無数にあるようです。





こうやって見る枝分かれの石積みは、実は最近まで土に埋まっていたそうです。
そして、多分まだ無数に埋まっている所があるようです。
これを掘り起こしたのは、下の写真の中央で説明をしている方。



えっ?! しかもボランティアで、しかも、ポリシーにより動力を使わず手堀、。
この見学会も友の会の方々のご尽力で行われているそうです。

今まで通ってきた沢は水量があり、又過去に土で埋もれたとの話しだと、これを維持するにはもっと人力が必要な気がします。
しかも、土木遺産というより、今も機能している砂防施設なのではないだろうか、。友の会への応援が必要、、。



さっきの所にリスがいた!と見せてくれました。どうも有難う!
(また私のピンボケ)

今回の見学会参加者に渡された、オリジナルカード(嬉しい)



つくづく、凄い工事だと思います。



100年前かーーー、。

こちらパンフレット



「デ・レイケ」さん?
聞いた事あるような、。

そういえば、2010年か2011年に行ってました。
デ・レーケ導流堤 !
大川市 観光なび





満潮だと見れないから、潮見表みて干潮時間にあわせて。
一応柳川観光もしたのですが、これ目的で福岡出張のタイミングも合わせました。
デ・レイケさんの当時の足跡を、知らぬ間に追っかけてました、。

さて、牛伏川のフランス式階段工ですが、
今年は色々記念行事があるようです。

牛伏川階段工完成100周年記念行事

秋も見学会があるようです。紅葉が良さそう、。そして、又行きそう、。

今回、友の会のガイドがあったおかげで、階段工の上まで行けたのは良かったです。
階段工だけでなく、その上部の機能、堰堤など広範囲にわたり、システムが構想され、今も機能しているという事、
説明が無かったら通りすぎていたと思います。どうも有難うございました。

|all articles|

2024.01.08 2024年 今年も宜しくお願い致します。
2023.12.29 松戸のアトリエが「住む。」に掲載されました。
2023.10.29 「ゆるまがりの家」の解説動画が紹介されました。
2023.08.13 松戸のアトリエ 住処になる
2023.08.05 松戸のアトリエ 出来立て写真

all articles >