2010.04.07
空中庭園駅
橋の上の空中庭園(K駅自由通路構想)
小川にかかる小さな橋は渡る人まで情緒ある。大河にかかる大橋は優美で町の誇りになる。なのになぜか、道路にかかる歩道橋、線路にかかる自由通路(橋)は、長~いだけでとりえがない。駅は隣町と隣町の接点であるだけでなく、線路で分かれた東と西、又は南と北をつなぐ接点でもある。本来駅は町の内側が開かれていく最初の点だ。
今回は今まで線路の西側にあった改札と駅舎をプラットホームの上に設け、橋上駅舎化する際の、西と東それぞれにつながる橋の有り様について検討する機会に接した。
そのつなげる橋のことを日本では「自由通路」と呼び、公共の道路の扱いとなっている。その日本の多くの「自由通路」はご存じの通り味気ない。プレファブの様な壁と、ちょっとしたポスター、青白い蛍光灯、というと言い過ぎかもしれないが、ホームタウンの最初のアプローチとしては何とも寒々しい。
イタリアには橋の上に商店が並ぶ由緒ある橋もある。最近日本でも駅中モール・駅外モールとして賑わいのある駅もあるが、日本全国それ!というのも待って頂きたい。
自分たちの玄関はきれいに掃き清めて花を生ける位の清々しい玄関が望ましい場合もあるのだ。前庭などあれば尚嬉しい。「この町にはなにがあるのだろう」という爽やかな期待感や、「ああ帰ってきた」そのときの風景が存在することが大事なことに思えた。
既存の自由通路の眺めは特に構築物がなく殺風景ではあるが、街への見晴らしが良くすがすがしい。その原風景も存在しながら過剰ではなく、礼儀正しい佇まいが出来ないかと検討した。
そこで、駅として建築物に見えるのを避け、むしろ庭園テラスとしての見え方を検討した。薄く伸びる庇であり空中床である板が緩く折り重なって高低差をつくる。防風や落下防止の措置に植栽を利用するが、板の隙間から自然に生えたような植生とする。時間を経る毎に駅が季節の草や木をまとう事を理想型として、その種となるような仕組みを検討した。そして、その佇まいが、通る人の一服となったり、立ち話しを出来る場となると良いと考えた。
改札を出るとこの町みんなの庭がある。ほのぼのと葉が揺れてその奥に長く延びる線路を眺められる。田園の線路の見える空中庭園。それが線路の西と東をつなげる橋になって欲しいと思う。